アリ飼いのためのアリ知識ノート

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2.1.ア行 

アリ散布植物 【ありさんぷしょくぶつ】 
種子にアリ誘引物質(エライオソーム【elaiosome】)をつけてアリに運ばせる植物。
一時的社会寄生 【いちじてきしゃかいきせい】 
(=一時寄生【いちじきせい】、=一時的寄生【いちじてききせい】)
結婚飛行を終えた雌アリが他種のコロニーに入り込み、乗っ取るようにして自らのコロニーとすること。
寄生【きせい】するのは最初のうちだけで、最終的には自種だけでコロニーを運営するようになるので「一時的」と冠される。
一般的な手順は、寄生種の雌アリがまず寄主となるコロニーの働きアリ1匹を押さえ込んでコロニーの匂い(体表炭化水素【たいひょうたんかすいそ】)を自分に移す。
数日かけて匂いがつくと、堂々と巣内の奥深く、女王の部屋まで入っていく(同じコロニーの匂いがついているため敵と見なされない)。そこで本来の女王を殺し、産卵を開始する。
働きアリたちは女王がすり替わったことを騒ぎ立てることもなく、黙々と育児を続ける。しばらくは本来の女王が産んだ卵や幼虫が羽化するが、次第に寄生種の幼虫が働きアリになっていく。2つの種の働きアリは、見た目は違っても「同じコロニー」なので対立することはない。
やがてゆっくりと、しかし確実に寄主の働きアリが減っていき(寿命などによる)、コロニー内に占める寄生種の割合が高まり、最終的には寄生種のみのコロニーとなる。
一時的社会寄生のメリットは、最初の産卵から育児をする働きアリを大量に確保できる点にある(→コロニー創設【colonyそうせつ】)。しかし、寄主のコロニーに入り込む際のリスクも高い。働きアリ1匹を押さえ込んでいる間に他の働きアリに攻撃されることもある。(土生氏他による→cf.種類別の特徴/トゲアリの項
自らの働きアリに育児する能力がなく、定期的に蛹や幼虫・卵の略奪を繰り返すサムライアリなどは一時的社会寄生ではなく、恒常的な社会寄生【しゃかいきせい】(一時的でないから)。
羽化 【うか】 
蛹【さなぎ】繭【まゆ】または裸蛹【らよう】)から成虫【せいちゅう】になること。アリのコロニー【colony】で大多数を占める働きアリ【はたらきあり】には羽がないが、昆虫一般ではここで初めて羽を持つので羽化と呼ぶ。→ステージ 【stage】
一般に、アリは自ら繭を破ることができず、羽化には働きアリまたは女王アリの助けが必要である。
繭剥きのヘタな女王を助けるため、飼育者がピンセットで人工羽化を試みることもあるが、中のアリを傷つけないように剥くのは難しいとの由である。(kuroyagi氏・南柯太守氏他による)
栄養交換 【えいようこうかん】 (=吐き戻し【はきもどし】、 =反吐【へど・はんと?】) 
そのうそ(口偏に素)嚢―漢字拡大】に貯めた栄養を他のアリに与える行為。
与える側が大きく大アゴを開き、受け取る側がその中に大アゴをつっこむようにして液を受け取る。
触角で相手の大アゴを叩くことによって相手に栄養交換を要求するといわれる。
巣の外で採ってきた餌を一度そのうに貯めてから与え合うことで、濃縮や何らかの栄養素や酵素などの付加が行われているのではないかという説がある(kuroyagi氏による)。
栄養交換とグルーミング【grooming】は、アリたちのささやかな娯楽なのではないかと観察者に思わせ、どんなに見ても見飽きない。
枝折り 【えだおり】 
アリの採取方法のひとつ。芯が空洞になった枯枝の内部に巣を作る樹上性の種のアリをコロニーごと採取することができる。内径2ミリ程度の細いものにもアリがぎっちり詰まっていることがある。
立木の(生きた)枝からは、まず出ないようだ。枯れ枝ならば、立ち枯れのものでも、折れて地面に横たわっているものでも、宙にひっかかっているものからも出る可能性はある。
折るときに剪定バサミなどを使うと楽ではあるが、女王アリをまっぷたつ、ということもあるので注意が必要。
越冬期間中は地中営巣性の種は深く潜るので、冬季の採集には竹割り【たけわり】とともに最適。
越冬 【えっとう】 
アリが採餌活動や働きアリ生産(=産卵・子育て)をするのは春から秋の暖かい季節だけで、寒い冬の間は活動を停止する。
越冬中は巣の中でほとんど動かなくなり、幼虫の成長も止まる。
成虫のみで越冬するもの(越冬の前にすべての幼虫が成虫になるか食べられるかする)、成長を止めた幼虫(2齢?)や卵も越冬するものがある。(成体越冬、幼虫越冬、卵越冬などと呼ぶ――あべ氏による)
また、秋に結婚飛行【けっこんひこう】が行われる種では、交尾済みの雌が単独で越冬し、春を待ってコロニー創設【colonyそうせつ】をするものもある。
越冬幼虫 【えっとうようちゅう】 
越冬【えっとう】のために成長が止まっている幼虫。春になると成長が再開する。が、食糧にされることも多い。
エライオソーム 【elaiosome】 (=エライオゾーム 【elaiosome】) 
植物によっては、種子にアリを誘引する物質(脂肪分・アミノ酸・糖)をつけてアリに遠くまで運ばせ、勢力範囲を広げようとするものがある。この物質をエライオソームと呼び、こうした戦略をとる植物をアリ散布植物【ありさんぷしょくぶつ】と呼ぶ。
エライオソームのついた種子をアリは巣穴まで運ぶが、エライオソームだけを食べて種子は巣の外や巣内のゴミ捨て場に捨てる。種子はそこで発芽することができる。
スミレ、カタクリ、ホトケノザ、フクジュソウなど、アリ散布植物は数多い。
大型ワーカー 【おおがたworker】 (=メジャーワーカー 【major worker】) 
働きアリ【はたらきあり】のうち大きいもの。→多型 【たけい】
雄アリ 【おすあり】 
雄のアリ。交尾を行うためだけの存在で、採餌や育児は行わない。交尾(結婚飛行)を終えるとすぐに死んでしまう。→カースト 【caste】
一般に、雄アリは飛行のために胸部は発達しているが頭部が小さく、雌アリとの判別は容易である。
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