アリ飼いのためのアリ知識ノート

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3.レビュー 

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書名五十音順

3.1.図鑑・手引書 

「日本産アリ類全種図鑑」 学研の大図鑑
著 者 日本産アリ類データベースグループ 著
出版社 学習研究社
発 行 2003.6.24
ばーん!重いよ。
すごいね、この志の高さ。Web上のデータベースで全標本が見られるけど、この大きさ、この解像度は得がたい。
これもざっと見ただけだが、亜科と属の検索チャートに感動した!
「腹柄は1節」「腹柄は2節」の別から始まり、アリのからだの特徴でもって属までの特定ができるようになっている。顕微鏡ほしーっ!
巻頭の写真&読み物の部分も読み応えがありそうだし、巻末の「アリの生態写真/標本写真の撮り方」も読み込まなくては。
標本は、なるべく殺さないで「麻酔して」撮るんだそうな!ひー。
 
「近所の虫の飼いかた(1)〜アゲハ・アリ・テントウムシほか〜」
虫の飼いかた・観察のしかた(3)
著 者 海野和男・筒井学・高嶋清明 文・写真
出版社 偕成社
発 行 1998.11
「近所の虫の飼いかた(1)」身近にいる虫の飼いかたを紹介したシリーズの1冊。
漢字にはルビが振られているが、子供だましでない説明。
クロオオアリの飼いかたが6ページにわたって紹介されている。フルカラー。写真多数。
たった6ページと思うなかれ。密度高し。
いきなり「クロオオアリの巣のようすを観察する場合にもっともよい方法は、初夏、交尾をすませた女王アリを採集し、巣ができるようすをいちばんはじめから観察する方法です」と始まって、各カーストの写真、女王アリの採集方法が第1ページ。
2ページ目は、ビンを2重にし、土か砂を入れて飼う方法と、透明プラケースで飼う方法の2種類がメリット・デメリットも含めて紹介され、最初の働きアリの羽化までが解説されている。
3ページ目は、えさやりの方法と注意点(2日に1回は交換しろって!そうよね、カビるもんね)、さらに囲み記事では、赤インクで色を付けた砂糖水を与え栄養交換で腹を赤く染める実験や他コロニーの働きアリどうしの戦い(「戦わせてみよう」ってゆってるね)について触れている。
4ページ目はページ全部が囲み記事で、「砂プレート」(ガラス板2枚で角材はさんで砂を入れるやつ。エサ場は透明プラスチックケースをビニールチューブでつなぐ)が紹介されている。
5・6ページ目も囲み記事。2ページ使って油粘土で型どりする縦型石膏巣の作り方と観察ポイントが丁寧に紹介されている。
保湿のための機構として、外に取り付けたボトルからガーゼを垂らして毛細管現象を利用する自動給水装置を使っているのが面白い。
これもエサ場はプラスチックケースで、石膏巣の上に固定して直接穴を開けている。
これからクロオオアリを飼いたいと思う人には非常に分かりやすい本だと思う。
働きアリ数の増加の目安も書いてあるし(「順調に育った場合、2年目には100匹をこえる大集団になる」って)。

他の虫についてはじっくり見るだけの勇気を持てないでいるが(だってハサミムシとか)、面白そうなトピックスが散見される。
テントウムシはえさのアブラムシとセットで飼うのだが、代用として「ゆでたまごの黄身とハチミツを混ぜたものを使う」(ただし栄養が不十分なのであくまでも代用品)とか、ヤマトシジミを飼う第一歩はカタバミを掘ってきて鉢植えをつくれとか、蛹になる直前に落ちてしまったアゲハチョウのケアのしかた(ティッシュでゆりかごを作る!)とか、うわ、ちょっとやりたくなった。
クロオオアリの2つ後にはアリジゴクが載ってて、水槽に入れた砂が漏斗状にへこんでるのを見ると、ちょっと誘惑されるなー。すでにエサは入手済みだし。・・・。

3.2.一般向 

「アリと人間」 ワイルドライフ・ブックス
著 者 レイ・ノース 著/斎藤慎一郎 訳
出版社 晶文社
発 行 2000.8.30
「アリと人間」イギリスのアリ学者による、愛のつまったアリ学入門読み物。
読み始めたばかりだが、いい本だと思う。
原題は「ANTS」。最終章でアリの生活を守る環境作りについて触れている以外、人間のことは出てこないよ。
進化の歴史や分類からはじまって、生態や社会性などを平易な文章で紹介している。
ふりがなも大サービスで、中学生向きの風情。私の求めていたものがここに。
訳している人は、蜘蛛の研究者だって。
 
「アリの国探訪」 
著 者 馬場喜敬 著
出版社 明玄書房
発 行 1969
「アリの国探訪」
「続アリの国探訪」
 
「蟻の結婚」 
著 者 古川晴男 著
出版社 法政大学出版局
発 行 1953 (増補新装版 1971)
「蟻の結婚」んはー!かっこいい!
「蟻」バーン!
昆虫文献 六本脚というところで買った古本であります。
表紙見返しに「昭和二十九年十一月十七日 本郷 有斐閣」っていう鉛筆書きの購入メモがある。
初版が昭和28年8月で、これは29年6月の7刷。売れたんだねー。
口絵の写真のページなんかくっついちゃってて、少なくとも10年くらいは誰も開いてなかったっぽい。

今日届いたばっかりで、まだなーんにもよんでないんだけど、ロシア・フォルマリズムっぽい(すみません、よく分からないまま使ってます)表紙と帯のアオリ文句「女性が支配する失業なき労働王国!(実物は旧字)」っていうのにぐっときちゃって、とりあえず購入の記録をしてみた。
レビューはまた今度〜。
 
「蟻の生活」
著 者 モーリス・メーテルリンク 著/田中義廣 訳
出版社 工作舎
発 行 2000.11 (旧版 1981.1)
「蟻の生活」
 
「アリの生態」 
著 者 馬場喜之 著
出版社 明玄書房
発 行 1965.10.20
「アリの生態」
 
「蟻の世界 少国民のために」 
著 者 矢野宗幹 著
出版社 岩波書店
発 行 1943
「蟻の世界 少国民のために」
 
「アリはなぜ一列に歩くか」 ドルフィンブックス
著 者 山岡亮平 著
出版社 大修館書店
発 行 1995.3
「アリはなぜ一列に歩くか」名古屋のショッピングビルの中の大型書店で見つけた。アリの本はないないと言いながら、こうやってぽろっぽろっと出てくるから油断がならない。
著者は生物のケミカルコミュニケーションを研究し、将来の夢を「アリのフェロモンを使ったサーカス団を作って世界の国々の子どもたちに見せて回り、化学と生物の面白さを知ってもらいたい」と吹聴する(失礼!)人物。
冒頭、黒澤明の「8月の狂詩曲(ラプソディー)」に呼ばれて終盤のアリが行列を作ってバラの木に登るシーンをゆだねられた話から始まる。
これだけで、ケレン味のあるおっさん(失礼!!)の自慢話&ホラ話(いや、ほんとに失礼!)だわーとワクワクしながら読んだ。
結果、そんなに大風呂敷を広げてはもらえなかったものの、アリを中心としたケミカルコミュニケーションの実直な紹介だけで、じゅうぶんに興味深い内容であった。

全体は、「アリの不思議な生態」「昆虫たちの生死を賭けた戦い」「植物と共生する虫たち」の3部構成で、それぞれワンテーマを数ページでまとめたものがランダムに並んでいる。
アリについて書かれているのは、全体の1/3程度。
あるべき図版がなかったり、イラストに置き換えられていたりして残念なところもあるが、全体に一般の人に興味を持ってもらおうという意欲にあふれた、面白い読み物。

中でも一番惹かれたのは、やっぱりクロサワ組での大活躍の話。
フェロモンを研究してても、ふつうは「ここからここまでアリンコたちをイイ感じに歩かせて」というオーダーを受けることなんてないよね。
で、受けてしまったら、いろいろたいへんだったという話。
歩かせたい道に道しるべフェロモンで線を引く、という作戦が、土にフェロモンを吸われてしまって失敗する。
フェロモンを塗る前にテフロンの撥水スプレーでコーティングすることでこの問題は解決したが、当然、アリンコはどうしてるわけ?という疑問が出てくる。
撮影に漕ぎつけるまで、いくつもの問題が出てひとつひとつクリアしていくのだが、クロサワの無理難題のおかげで新たな研究テーマにつながっていくところが面白い。
やっぱり世の中には無茶な人ってのが必要だね。
そういう状況に置かれることで、火事場の馬鹿力的な飛躍もあったのだと思う。
あとがきによると、この映画の件がきっかけでアリのコロニー臭の本体が体表炭化水素組成比であることが分かったのだそうだ。

もうひとつ、「吐き戻し喜び仮説」というのも気になった。
吐き戻しによる栄養交換はアリ自身に快感をもたらし、そのために積極的に栄養交換が繰り返されて集団の維持が実現される、という仮説である。
なぜ自分で食ったものを同じコロニーとはいえ他者に分け与えるのか、という疑問に対する挑戦だ。
まだ研究途上のようだが、M.メーテルリンクが「蟻の生活」の中で同じことを「反吐の快楽」だったか「恍惚」だったか、ええと、ちょっと正確なところは思い出せないが、そんなふうに呼んでいたのを思い出した。
こういう仮説が出てくるためには、アリンコの生活にじっと目を、それも愛情のこもった目を注ぐ必要があるのだと思う。
つまり、アリンコに感情移入してるわけだ。
メーテルリンクは思索にふけるだけだった(と思う)けど、山岡氏はこれを証明しようとしている。
面白いっ。
今後、どうなるのか楽しみ。
・・・ちゃんと一般向けに出版されるかしら。
 
「続アリの国探訪」 
著 者 馬場喜敬 著
出版社 明玄書房
発 行 1974
「続アリの国探訪」
「アリの国探訪」
 
「地球はアリの惑星」 シリーズ〈共生の生態学〉 3
著 者 東正剛 編/伊藤文紀・大河原・柴尾・村上・米根 著
出版社 平凡社
発 行 1995.1
「地球はアリの惑星」

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